伝統的に日本のアニメは世界的にも品質が高いことが有名で「君の名は」等は世界的に大ヒットすることになり大きな興行収入を上げている状態になっていますが、それとは裏腹にアニメの制作現場の労働環境はお世辞にもよくなくて、厳しい現実があります。
実際に大学を卒業後にアニメ製作会社に就職をした人がいらっしゃるんですが、毎月の手取りは10万円を下回っており、更には個人請負で正社員ではありませんので、そこから更に保険料や年金などを支払っているととてもではありませんが生活は出来ません。
そのアニメ製作会社で働いている人がどのようにして生活をしているかと言えば、埼玉県の実家から東京の制作会社に通勤をしている状態なので何とか生活が出来ていますが、万が一一人暮らしであるなら普通に生活することはかなり厳しい状態になります。
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20代のアニメーターが実家暮らしになる事情は下請け構造。
アニメーター自体が、完全な下請構造の末端になっており、その殆どが正社員ではなくて個人請負で働いている状態で一枚動画を書いたら数百円の世界で、ひたらすら動画を書き続けることになるのですが、毎日それを行っても手取りは10万円以下の状態。
更に正社員でない場合は、会社までの通勤費も自腹になりますし、雇用保険などにも加入できませんので、労働時間が極端に多くなりがちなアニメーターとして労働をしていると、体を壊してしまって働けなくなった際にどうなるかは想像したくもありません。
手取りが5万円なども珍しくないアニメーターの業界ですが、実際に働いている20代の若い人は実家暮らしでないととてもでは生活は出来ないのですが、この仕事がしたくて折角この業界に入ったのだから何とか継続したい一心で、低賃金で働いています。
アニメーターの収入が極端に低いのは下請けの末端だからです。
アニメが完成するまでのお金の流れを見れば分かるんですが、いわゆる製作委員会と呼ばれている組織があり、そこにお金を持っている大企業などが集まって出資を行い、アニメが成功して関連商品が売れそうな作品を積極的に制作していく事が殆どです。
その際に制作するアニメの作画等を下請けに発注して、制作会社が請け負って仕事をしていくわけですが、この制作会社に流れるお金があまりにも安すぎることから、その安いお金でアニメーターに配分しないといけないので儲からない仕組みになっています。
下請構造の会社が絶対に儲からないのはどの業界でも同じなんですけど、あくまでアニメを制作するのみでそれにかかる費用や大コケした時の金銭的なリスクは追わない制作会社は関連グッツやDVDなどの販売がどれだけ利益を出しても当然還元されません。
このあたりは株式投資などと同じで、投資していない人にはリターンはないのです。
自ら仕事を受注する構造を構築しない限りは先がない業界。
実際に下請け構造の業界の末端の下請け業者は、どの業界もギリギリで死なぬよう生きぬような状態になっていることが多くて、これは自動車業界もかなり酷いものがあり、どれだけ下請けが仕事をしても利益にならない仕組みなので借金が増えるばかりです。
アニメーターの場合も同様に深刻で20代の若い人であれば、月収10万円以下の人が当たり前の業界なんですが、労働対価に見合っていない報酬であるならその問題は経営者の経営能力がないという判断になりますから、受注の仕組みを変える必要があります。
最近では請負の事業主ではなく正社員としてアニメーターで働ける会社や労働環境が改善された場所で働ける会社も少しずつは増えてきていますが、それらの会社の経営者は斬新な価値観で業界を良くしようと努力しているので結果が出てきている状態です。
アニメーターの仕事は特殊な技術や経験が必要になり、シニアアニメーターになるには相当な経験を積まないと簡単にはなれない業界なのですが、現状では実家暮らしでないと生活が出来ない状態になることが多く、転職する会社は慎重に選んだほう良いです。